『ハウルの動く城』、韓国で観客300万突破。

公開50日ぶりの2月9日、全国動員観客数300万人を突破した模様。広報担当社のラッピンボアによると、2月10日ソウルで4つ・全国24上映劇場で全国観客約300万5200人(ソウル97万7400人)を記録したとの事です。『千と千尋の神隠し』の記録を先月上回った『ハウルの動く城』は、これで実写映画まで含め韓国で最大の観客を動員した日本映画になりました。だが現在上映劇場数が少なくなっているので、韓国で最大の観客動員アニメーションの記録を持つ『シュレック2』の320万人の記録には及ばないと予想されています。

韓国で『千と千尋の神隠し』に続く、この『ハウルの動く城』の連続ヒットは大きな意味を持ちます。まず「宮崎駿」のブランドネームが最早韓国でも、例えば「スティーヴン・スピルバーグ」のように、完全にビッグネームとして確立された事。私は『千と千尋の神隠し』以前からも、宮崎駿監督の名前はかなりブランドネームとして韓国でも充分なパワーを持っている事は色んな観点で証明されていると思っていました。例えば漫画やアニメの関連書籍が殆ど売れない韓国で、唯一売れているのは「宮崎駿」をタイトルに持つ本だけだという事。また韓国でアニメDVDがどれだけ売れるかまだ疑われていた時、『未来少年コナン』のDVDが日本のTVアニメとしては初めて大ヒットし(と言っても勿論日本とは比べものにならない数ですが)、その後今まで続く韓国でのアニメDVD市場を作り上げた事。そしてそもそも、韓国においてアニメファンが持つ『未来少年コナン』の大きさ。その後『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』が、韓国語に翻訳はされませんでしたが日本のLDがそのまま輸入されるなどして韓国での認知度がどれだけ高かったかを思うと、それらを見て育った「日本アニメに親しい」世代が映画観客で大きな比率を示し始めている1990年代中盤以来、宮崎駿監督の「新作」は最早ハリウッドのヒット監督くらいのネームバリューを持っているのです。
ただし、新作ではない場合(韓国では『千と千尋の神隠し』よりもほぼ一年くらい遅れて公開された『もののけ姫』など)、または宮崎監督作品ではないジブリ作品(『猫の恩返し』など)が、未だ高い観客動員数は記録出来ないでいる事。そして、宮崎駿監督とジブリ作品、そして押井守監督作品以外の日本の劇場アニメ作品は、今や輸入さえも難しくなっています。もし輸入されたとしても、良い劇場でメイン・スクリーンを得る事は難しい状態です。今まで何度も、宮崎駿作品以外の日本アニメは興行に失敗したから、劇場側が信じてくれないのもまぁ当たり前ではありますが…。ですが私としては、まだ韓国で(宮崎駿作品以外の)日本アニメはヒット出来ないと決まった訳じゃないと思うので、こういう雰囲気はかなり残念です。
今までの失敗の殆どは最初から輸入するべきではなかった作品、例えばもう古くてあまり観客が集まらないような作品か、またはそもそも日本でも大衆的なヒットはしていなかった作品ばっかりでしたから。それらの作品が観客動員出来なかったと言え、(宮崎駿作品以外の)日本アニメ全てが韓国では観客動員出来ないと決め付けるのは早過ぎるでしょう。だが韓国映画の人気が高いし、ハリウッド作品など他の競争作も多いので、スクリーン獲得への争いが激しくなっている今の韓国の劇場事情もあり、今まで宮崎駿作品以外には韓国で決定的なヒット作を出せなかった日本アニメは、劇場側としてもあまり歓迎出来ないのです。元々2月に公開予定だった『遊戯王』の劇場版が、劇場の反応が悪く結局夏休み時期に公開が延びたという件も、その一例でしょう。
(*『遊戯王』劇場版、結局は4月1日に公開決定されました。ただしCGVチェーン限定の公開。CGVは韓国でかなり大きい劇場チェーンではありますが、だとしてもそこだけというのも…。)
でも、ヒットし得る作品を輸入し充分な広報をやってから公開すれば、まだどうなるか分からないと私は見ています。劇場版の『ポケットモンスター』の場合も、早い時期に公開したのでそれなりの結果を残した事もありますし。最初から「日本でもヒットした作品を」「出来るだけ早く輸入して公開」する試みがあればいいのですが…。それで成功出来たら、もっと日本アニメに対する韓国劇場の見方も変わるのではないかと期待しています。

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선정우(宣政佑/そん・じょんう/Seon, Jeong-U) 1995年韓国でライターや翻訳から始め、2002年からは日本など海外でも寄稿・講演など仕事。主に漫画・アニメーションそのほか文化に関し執筆。翻訳・出版・書籍の仲介などの仕事も。 2019年「第25回韓国出版評論賞」評論優秀賞受賞。 ●(日本語から韓国語への)翻訳 (※2013年以前に漫画翻訳、共訳、翻訳への監修など多数) 『ストーリーメーカー』(大塚英志/2013年[以下、韓国発行日]) 『物語の体操』(大塚英志/2014年) 『ストーリーメーカー』(大塚英志/2014年) 『物語の命題』(大塚英志/2015年) 『世界まんが塾』(大塚英志/2015年) 『物語論で読む村上春樹と宮崎駿』(大塚英志/2017年) 『新世紀ゾンビ論』(藤田直哉/2018年) 『ウェブ小説の衝撃』(飯田一史/2018年) 『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(飯田一史/2019年)…

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