ブックオフ(BOOK OFF)ソウル駅店オープン。

ブックオフ・ソウル駅店

2006年3月30日、日本の新古本中心の流通チェーン「ブックオフ(BOOK OFF)」のソウル店(ソウル駅店)が出来ました。
http://www.hardoff.co.kr/store/service_seoul.html
http://www.hardoff.co.kr/service/service_bookoff.html

広告用チラシには「BOOK・OFFいよいよ韓国上陸!」と日本語で書かれていて、多分ソウル居住の日本人を顧客として想定しているのではないかと思われます。店員にも日本人が多いようだし、店に入っていくと“オソオセヨ、いらっしゃいませ〜”と、店員の挨拶が韓国語と日本語の両方聞こえます。そのエキゾティックさが、韓国人の日本漫画マニアたちにもちょっとした話題になっていました。

しかも、今のところ古本も日本書籍だけ販売および買取していて、韓国の書籍は扱っていません。その反面CDの方は韓国および外国音盤だけ扱っていて、日本音盤は販売および買取をしていないそうです。これから取り扱う予定だとか。ちなみに日本ブックオフの会員カードも利用出来ません。

ブックオフ・ソウル駅店は、ソウルの地下鉄4号線ソウル駅の11番出口を出てすぐのところにある「ゲートウェイタワー」の1階にあります。

オンライン漫画の事

これらは全て、韓国の図書全体の話ではありますが、この中で漫画の流通も大きく揺られています。1988〜90年以来、日本の漫画システムから大きく影響を受けた(…と言っても日本漫画システムの中身はほぼ無視した、変な自己流だと言えますが)、雑誌を中心にした韓国の漫画システムが、2004年を基準にほぼ崩壊しました。今や、韓国漫画界で漫画雑誌の持つ影響力というのは殆どありません。一番売られている漫画雑誌の販売部数が2万部にも満たない現状で、漫画雑誌は機能を失いつつあります。むしろスポーツ新聞を中心にした新聞の漫画紙面や、インターネットのポータルサイトで連載されるオンライン漫画の方が遥かに大衆への波及力を持っています。その一方にある、単行本だけで売られる学習漫画。この3つのジャンルが、今の韓国漫画の中心だという事です。中でも新聞とオンライン漫画は、カラーを基本にしているだけでストーリーものもあるし1ページくらいの短い漫画もあったりして、既存の漫画を受け継ぎながらも新しい試みを見せています。その中で私は、韓国の大衆にその影響力を失いつつあった、漫画というジャンルそのものの力が甦るようにも感じています。

「ただ」という感覚が蔓延しているインターネットでオンライン漫画がどういう風になるべきか、という問題でも、2004年はカン・フル氏の『純情漫画』の大ヒットによってその方向が示された年でした。1990年代以来、色んな試行錯誤を反復してきた韓国のオンライン漫画において、一つの「標準」になり得るシステムを作り上げた事は大きく評価出来ると思います。そのシステムが何なのか、そしてそれの持つ意味などについては、長くなるのでまた機会があれば書きます。

ホームショッピングチャンネル、オンライン書店の成長

かなり前から言われていた事ですが、昨今の韓国では書籍の流通ルートが目まぐるしく変わっています。
まず日本との違いは、韓国では古本屋の比重が殆どない、とまで言い切れるという事。なので日本のように、新古書店の問題などはありません。その代わり、韓国には図書のレンタル屋、「図書貸与店」なるものが存在します。これは日本にも最近、主に漫画を中心にして流行している「マンガ喫茶」とは違います。まず漫画だけを扱わない(漫画が中心にはなっているし、漫画専門の貸与店もあるにはありますが)という事と、そして何より違うのは、その場所で本を読むのではなくて本を借りてきて家で見るようになっている(レンタル)だという事です。

とまぁ…、ここまではもう日本でも知られている部分です。このシステムには色々と問題もありますが、問題が露呈されるのはどんなシステムであっても当たり前の話ですし、とにもかくにも時間が過ぎればシステムには適応出来るものです。なので韓国の出版市場はこれに適応して行ったのですが、問題は市場のそれぞれの構成員たちが適応する時間がないくらい目まぐるしく変わっていく市場状況なのです。

…で、今はそっちの話をしようという訳ではなく、昨日ニュースを見たら韓国で大きなTVホームショッピングチャンネルの「LGホームショッピング」(ケーブルTV、有線放送、衛星放送にホームショッピングチャンネルを持っている会社です)が、去年の図書販売額において韓国最大の書店、「教保(ギョボ)文庫」光化門(グァンファムン)店の売上額の半分に当たる、420億ウォンを記録したという話でした。LGホームショッピングの図書売上額は、2002年35億ウォン→2003年260億ウォン→2004年420億ウォンに増加したと。その代わり教保文庫光化門店の去年の売上げは、2003年より0.91%減少した950億ウォンあまり。1981年同書店開店後初めての売上げ減少だと言います。

さて、これには色々な側面があります。まずTVのホームショッピングチャンネルで販売される図書の多くは、シリーズの学習関係の本や全集の類、そしてベストセラーだけに限定されるという事。実は韓国で1000万部以上の販売を記録し、韓国漫画歴史上最高の販売部数を記録した『漫画で見るギリシアローマ神話』で代表される、所謂「学習漫画」なるものの最近の躍進には、このホームショッピングチャンネルの存在も少なからず起因しているはずです。実際、LGホームショッピングの児童チームのマネジャーも、「ホームショッピングの主な顧客層は幼い子供がいる20代後半から30代前半の主婦。彼女らは子供の教育においては支出を惜しまないため、去年の不況にも関わらず児童図書の売上げが急成長した」と言っています。

他にも、「CJホームショッピング」が前年対比2倍増加の400億ウォンの売上げを、「ヒョンダイホームショッピング」は150億ウォンの売上げを記録しました。ホームショッピングチャンネル3社だけで970億ウォンです。そしてインターネット書店では最大の「インターパーク」が、2003年の478億ウォンから2004年975億ウォンで、教保文庫光化門店の売上げを越えています。インターパークの善戦は、児童図書中心のTVホームショッピングとはまた違います。インターパークは図書専門ではなく色んな商品を扱うショッピング専門サイトなので、販売図書も主に経済や資格試験、語学関係の図書の比重が大きいです。「YES24」など、図書・音盤中心の「書店サイト」とはまた違うという事です。

ここまで躍進しているホームショッピングチャンネルとオンライン書店に対し、韓国の書店数は1994年5683店から2002年2376店、半数になっています。私もここ2、3年、確かにオフライン書店で書籍を購入した事はあまりありません。ちょっと多く買えば重いし、殆どのオンライン書店が郵送料がただなので(店によっては一定額以上購入した場合に限り無料になったりもするが)わざわざ出かける必要がないから良いです。
…って言うかまず言葉からして「一般書店」ではなく「オフライン書店」と表現するあたり、時代を感じます。韓国では最早街角の書店の事はオンライン書店の反義語、「オフライン書店」と呼ばなければならなくなりつつあるのです…。